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大阪地方裁判所 平成10年(ワ)14053号 判決 1999年6月15日

原告

小田庸男

ほか七名

被告

宮本富江

主文

一  被告は、原告小田庸男、原告小田瑞穂及び原告山野敬子に対し、それぞれ金四〇七万六五一〇円及びこれに対する平成九年一一月六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告は、原告松山志津子、原告伊藤卓二、原告種田明子、原告小野道子及び原告吉澤文子に対し、それぞれ金二四四万三九〇六円及びこれに対する平成九年一一月六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、これを三分し、その一を原告らの、その余を被告の負担とする。

五  この判決は、第一項及び第二項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告は、原告小田庸男、原告小田瑞穂及び原告山野敬子に対し、それぞれ金六一八万三一三八円及びこれに対する平成九年一一月六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告は、原告松山志津子、原告伊藤卓二、原告種田明子、原告小野道子及び原告吉澤文子に対し、それぞれ金三七〇万九八八二円及びこれに対する平成九年一一月六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、被告運転の普通乗用自動車(山口五四ふ五二九。以下「加害車両」という。)が平成九年一一月六日午後五時四五分ころ、山口県熊毛郡田布施町大字下田布施二一一七番地先路上において、猫車(一輪車)を押して道路を横断中の小田菊枝(明治三八年一一月一五日生まれ。以下「亡菊枝」という。)に衝突したことにより、そのころ、同人が脳挫傷により死亡した(以下「本件事故」という。)ことにつき、原告ら相続人が自賠法三条に基づき、被告に対し、それぞれ損害賠償を請求した事案である。

一  争いのない事実及び証拠(甲一、二、四ないし一三)により容易に認定される事実

(一)  本件事故が発生したこと

(二)  被告に自賠法三条の責任が存すること

(三)  原告らが別紙相続関係図記載のとおり亡菊枝の相続人であること、法定相続分が原告小田庸男、原告小田瑞穂及び原告山野敬子が各六分の一であり、原告松山志津子、原告伊藤卓二、原告種田明子、原告小野道子及び原告吉澤文子が各一〇分の一であること

二  争点

原告らの損害額、その関連での、本件事故の態様、過失相殺の成否及びその割合(原告ら主張の損害額は、別紙損害明細記載のとおりである。)

第三争点に対する判断

一  亡菊枝の損害額

亡菊枝は、本件事故により、次のとおりの損害を被ったことを認めることができる。

(一)  本件事故の態様、過失相殺

前掲甲四ないし六及び弁論の全趣旨によれば、被告は、平成九年一一月六日午後五時四五分ころ、山口県熊毛郡田布施町大字下田布施二一一七番地先路上において、加害車両を時速約四五キロメートルで前照灯を点けて運転していたところ、前方不注視のため、猫車(一輪車)を押して、加害車両の進行方向から見て右側から左側に道路を横断していた亡菊枝の発見が遅れ、急ブレーキをかけたが間に合わず、加害車両を衝突させたことが認められるが、一方、亡菊枝は、前照灯を点けて走行してくる加害車両を発見すること比較的容易であること、その年齢(当時九一歳)を考慮するとき、亡菊枝が猫車(一輪車)を押して道路を横断するには、ある程度の時間を要するなど、緩慢な面があったと推認するに難くないといい得るところである。

以上認定の本件事故の内容及び態様によれば、本件事故の発生につき、被告の過失が大なることは明らかであるが、前記認定によれば、亡菊枝においても、本件事故の発生につき、過失を免れない。この点、亡菊枝には、二割の過失があったということができる。

(二)  葬儀費用 一二〇万円

亡菊枝の年齢、葬儀に要した費用(甲二六)等に鑑みるとき、一二〇万円の限度で、本件事故と相当因果関係のある損害と認める。

(三)  逸失利益 七五九万八八二六円

亡菊枝は、本件事故当時、年間三四八万五七〇〇円の恩給(なお、これは亡菊枝が山口県立高等学校の教諭をしていたことに伴うものであって、恩給法上の普通恩給に該当する。)を受けていた(甲三、二七)。亡菊枝は、当時九一歳である。そうすると、平成八年簡易生命表によれば、当該年齢の女性の平均余命は四・六一年であるが、亡菊枝のこれまでの健康状態から見て、少なくとも五年間生存できたと見ると、これに対応する新ホフマン係数は四・三六となる。

これらの数値を基礎に、新ホフマン式計算法により、年五分の割合による中間利息を控除して、亡菊枝の逸失利益を算定すると、次の計算式のとおりとなる。

348万5700円×(1-0.5)×4.36=759万8826円

(四)  慰謝料 一九〇〇万円

亡菊枝の年齢、本件事故の内容及び態様、亡菊枝と原告らの親族関係(原告らは、いずれも亡菊枝の甥又は姪である。)、居住関係(原告らは、いずれも亡菊枝と同居はしていない。)、その他本件に現れた一切の事情を考慮すると、亡菊枝の慰謝料は、一九〇〇万円が相当である。

二  過失相殺後の亡菊枝の損害額

以上によれば、亡菊枝は、本件事故により二七七九万八八二六円の損害を被ったといえるが、前記のとおり亡菊枝には、二割の過失があったというべきであるから、過失相殺後の亡菊枝の損害額は、二二二三万九〇六〇円(一円未満は切り捨て)となる。

三  原告らによる相続

原告らが甥又は姪として亡菊枝の相続人であること、原告小田庸男、原告小田瑞穂及び原告山野敬子の法定相続分が各六分の一であり、原告松山志津子、原告伊藤卓二、原告種田明子、原告小野道子及び原告吉澤文子の法定相続分が各一〇分の一であることは、前記認定のとおりである。

その結果、相続により、原告小田庸男、原告小田瑞穂及び原告山野敬子は、それぞれ三七〇万六五一〇円の、原告松山志津子、原告伊藤卓二、原告種田明子、原告小野道子及び原告吉澤文子は、それぞれ二二二万三九〇六円の各損害賠償請求権を取得した。

四  弁護士費用

本件事故の内容及び態様、本件の審理の経過、認容額等に照らすと、本件事故と相当因果関係がある弁護士費用は、原告小田庸男、原告小田瑞穂及び原告山野敬子につき、それぞれ三七万円、原告松山志津子、原告伊藤卓二、原告種田明子、原告小野道子及び原告吉澤文子につき、それぞれ二二万円をもって相当と認める。

五  原告らの損害額

以上によれば、被告に対し、原告小田庸男、原告小田瑞穂及び原告山野敬子は、それぞれ四〇七万六五一〇円、原告松山志津子、原告伊藤卓二、原告種田明子、原告小野道子及び原告吉澤文子は、それぞれ二四四万三九〇六円の損害賠償請求権を取得したということができる。

六  よって、原告らの請求は、主文記載の限度で理由がある。

(裁判官 中路義彦)

損害明細

1 亡菊枝は、本件事故により、次のとおり、合計3409万8826円の損害を被った。

(1) 葬儀費用 150万円

(2) 逸失利益 759万8826円

亡菊枝は、生前、年間348万5700円の恩給を受け取っていたので、これを基礎に、生活費控除割合を50%、平均余命を5年、これに対する新ホフマン係数を4.36として、逸失利益を算定すると、次のとおりである。

348万5700円×(1-0.5)×4.36=759万8826円

(3) 慰謝料 2500万円

2 相続

亡菊枝の相続人は、別紙相続関係図記載のとおりであり、法定相続分は、原告小田庸男、原告小田瑞穂及び原告山野敬子が各6分の1であり、原告松山志津子、原告伊藤卓二、原告種田明子、原告小野道子及び原告吉澤文子が各10分の1である。

3 弁護士費用

原告らは、本件訴訟追行を原告訴訟代理人に委任せざるをえなかった。その結果、被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用として、原告小田庸男、原告小田瑞穂及び原告山野敬子につき、各50万円、原告松山志津子、原告伊藤卓二、原告種田明子、原告小野道子及び原告吉澤文子につき、各30万円の損害を被った。

4 結論

よって、原告らは、被告に対し、それぞれ「請求」記載のとおりの金員の支払を求める。

相続関係図

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